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『南海トラフ巨大地震』その15「想定の整理」 南海トラフ巨大地震が発生した場合、揺れから始まり何が並行して起こるのかを考え「22分類」しました。 今回はライフライン『⑪ 断水』を考えます。 断水で影響を受けるのは上水道と下水道です。 まずは『上水道』について考えます。 上水道とは、衛生管理された飲用に適する水です。 多くの災害ではこの設備が被害を受けます。 供給設備の破損・汚損、配管の破断・破裂、供給の停止など。 水を送水するには、ポンプが必要で電力を必要とします。 戸建てなら水道設備に直接的な打撃、ビルやマンションでは供給ポンプの停止等により各住戸に水が届けられなくなります。 そんな場合、過去の事例から「給水車を待ち給水を受ける」「近隣の井戸水を分けて頂く」「自宅の井戸水を使用する」等々。 現在でも、普段から自宅の井戸水を使用する住戸もまだまだ多いとも聞きます。 ところがひとたび停電すると深井戸ポンプは動かなくなります。 浅井戸の昔ながらの手漕ぎポンプでとなるのですが、浅井戸水は雑菌の心配もあり、普段から保健所で定期的に検査をしていても、次の日が同じ値であるという保障は無いのです。 しかしながら、『無いよりは命を守り抜けるアイテム』となるので、飲料とするには火を入れる必要があります。 さて、現代社会では人が一日に使う生活用水は50Lといわれています。 その大半がトイレ用水であり『命の水』です。 グリーンシティには防災井戸(地下30m)が2ヵ所あります。 それぞれ1分間に200L×2ヵ所で400Lで約2千人を賄うことになります。 災害時には、近隣からの取水も考えられ長蛇の行列が想定されます。 次に『下水道』について。 当たり前のことですが上水道が断水ならば、下水道にはその分の水は流れません。 しかし人間は排泄をします。 上水道が断水でも、人間は排泄をします。 その分は流れますが上水道がなければ基本的に下水道は適切に流れず必ず詰まります。 上水道が断水で排泄を流す水が確保できなければ、下水道へは流せないのです。 また下水道の破断により、排水規制をしなければならないこともあります。 ビルやマンションという建物はそれに該当します。 建物で下水道の縦管破断が起これば、その階で排水汚水が漏水すると、階下には汚水が漏水し汚染が発生します。 それをくい止めるには排水規制をするのが効果的です。 しかし!そこには究極のマナー遵守が必要となります。 『水を!トイレを!流さないでください!』と告知し続けてもマナーの悪い人は流します。 また、告知の意味が通じない人も多くいる ことも過去の教訓から考えられます。 そこには『自分ち一軒くらいは流しても問題ないだろう』という身勝手さがトンデモナイことを引き起こすことになります。 下水道が使えないと上水道の断水と同じで、命に関わることになる『トイレ問題』が発生します。 過去の災害後の教訓から学べば、トイレを我慢してはいけない重要性はご存知の通りです。 だから命を守る非常用トイレの作り方や緊急用トイレの作り方は学んでおく必要があります。 作り方や設置の仕方、仮設トイレの作り方等、命を守るため一度は知識として学んでおくと良いでしょう。 メディアでもクローズアップされない『公共の上水道下水道施設の被害』。 その中でも上水道は「水が出ない」などとして蛇口をひねって水が出ないシーンはテレビでもよく見かけます。 ところが『下水が流れない』『トイレの排水不良』などをテレビで見ることは少ない。 少なくとも私は目にしたことがありません。 『山盛りの大便』も語られる阪神淡路大震災の被害。 ドラマ『救命病棟24時』の中でも、小栗旬さんが演じたトイレ掃除のシーンがあります。 このシーンは災害後の語られることの少ない教訓にクローズアップしたものです。 『誰もがやりたくない!』『なぜ俺がやらなければ?』とても大切な教訓であり、学ぶべき重要な記録です。 ところで皆さんは、自分の住む地域の下水処理場がどこにあるのかご存知ですか? このこともクローズアップされない話ですが『下水道の利用・使用制限』が発表されることがあります。 しかし『マナーの問題』がここにも現れます。 自分さえ良ければ、自分ひとりくらいは大丈夫だろう。 このような考え方が多くいればトンデモナイことが起こります。 つづいて『給水車、給水』について考えます。 南海トラフ巨大地震では最悪の場合、中部から九州地方にかけて震度7を含む激しい揺れに見舞われます。 高知、和歌山県沖など太平洋沿岸部には、最大30m超の巨大津波が押し寄せます。 被害は計31都府県764市町村で29万8,000人が死亡します。 発生する火災とあわせ、235万棟を超える建物が全壊、日本の人口の10%弱に相当する約950万人が避難を強いられ、日本国民の半分の約6000万人が被災することになります。 被害総額は国家予算の2倍にあたる総額292兆円に上ります。 このような中で、あなたは『給水車・給水の支援』と受けられると思いますか?「イヤイヤそんな大きな事までは起こらないよ」と思う方は、自分の責任でそれなりの備えで良いのかも知れません。 だが『給水車・給水の支援』が来るだろう等と期待する方が間違っています。 日本人の大半は被災し、その人達は何らかの『被災者』です。 その被災者を最初から当てにするような間違った考え方は改めなければなりません。 行政職員も自衛隊員も消防署員も警察官も消防団も、みんな被災者となるのです。 やはり同じ被災者を当てにするのは人としてどうだろうか? 最低限は自分が必要だと考える備えはしておきましょう。 それがマナーであり、ひとつのルールです。 その為に、自分で考え、自分で責任を持ち、自分で覚悟を持って、自分の必要数量を決断して備えておきましょう。 間違えてはならないのが『何処かの知らない誰かがきっと助けに来てくれる』。 そんな白馬の王子様は巨大地震では期待できません。 誰もが生き抜くことで必死になる状態です。 自分で命を守りぬく「死なない対策」をやっておきましょう! 最後に、グリーンシティの防災井戸、普段は子ども達の遊び場・みんなの憩いの場ですが、緊急時は!命の水の確保や消火用水となる重要な防災拠点です。 2週間に1回程度、有志ボランティアによる洗浄消毒作業も大切なメンテナンスであり「消防訓練・防災訓練」なのです。 消火器で消火訓練・避難所へ避難訓練・119番通報訓練も大切ですが、お互いさまの気持ちを持って『自分事と考え活動をすること』も大切な総合防災活動です。 その活動の基本となるのは『あいさつ』です。 お互い様の気持ちで「あいさつをすること」は、毎日行うことができる最も重要な防災訓練なのです。 ![]() |