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2022年11月号 |
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今回は『避難』。 皆さまにお尋ねします。どんなとき、何を基準に「避難しよう!」と思われますか? とても難しい質問ですが「避難をする」「避難はしない」と決断することは、どこかの誰かが決めるのではなく、あなた自身が決める判断力です。 避難行動とは、降り掛かる危険から物理的に遠ざかることです。現代社会では、避難というと避難所に逃げることだと多くの人は思っていますが『逃げる』という単純な行動は、人間だけではなく生き物すべてに共通する命を守る最善策です。これは自然災害だけではなく、自分の身に降り掛かる「すべての災いから逃げる」という原理原則です。本来、人間すべてに持ち合わせた安全管理・危機管理ですが、どうもそうではない人が多く存在しているのが現状です。これは現代の特に日本人の特徴であり、安全を他人まかせ・他者に丸投げしてしまうことが顕著に現れています。それは「避難しない」ということを誤解してしまっているのです。「避難」とは、その場から立ち去ることだけではありません。あなたが今のままで何の行動もとらなければ、あなたの命を奪う何かが降り注ぐのを待つだけだということです。言い換えれば「防御姿勢・防御行動をとりましょう」ということです。 昔からのゲームで「たたいてかぶってジャンケンポン」という遊びがあります。ジャンケンに負ければ、頭を防御するものを手に取り、ジャンケンに勝ってたたいてくる相手に対し防御態勢をとるという誰もが知るルール。ところが相手が災害となると話は変わる。なぜ? 災害からの守備体制となると、判断を誤ったり、避難行動を躊躇したり、他者の動向をなぜか見てしまう。これはゲームでは考えられない「守備・防御・防衛」と「避難」というものの違いだと考えられます。 避難行動の仕組みは、個人や家族・地域というような集団が脅威にさらされた時、その事態を回避するために『移動』という行動をとることです。避難行動は、単純な行動に見えて、実は複雑な要素があると考えられます。個人の単独行動というものではなく、集団的行動をとらせようという目的が仕組みをより難しくさせているようです。更には「避難しよう」という個人行動をより強く「避難しなければならない」という周囲の人を巻き込むという相互作用を促す複合的作用に変化することが、避難行動に移るのを遅らせてしまうことや、避難を中止するという選択肢を見出してしまうのです。その原因に「危険が迫っている」という情報を信用していないことや「また、ここに戻って来なければならない」ということが「避難をする選択」ではなく「できれば避難しないでおこう」という人間の心の優柔不断な部分につけいる災害ウイルスのようなものだと考えます。 では、避難行動を時系列で考察します。 「危険を知らせる情報が伝わる」これがスタートライン。それらの情報発信元は、気象庁や国県市町村の防災情報伝達システムから始まり、消防や警察の広報車両から避難伝達がなされると同時に、メディアの通信システムを経由し、インターネット網の情報サイトやSNSにアップされ、それらの情報が伝達されます。この場合、多くの人はまだ他人事であり、直接的なダメージは食らっていないので「即避難」とはならないようです。 しかし、自分が地震の強い揺れを感じ、津波の到達を確認、目の前の河川が氾濫、自分の居る場所が浸水を始めるという、自分の目や肌で確認することで「避難」というものが脳裏を横切ります。その場合は、自分自身に危険が降り掛かり、災害発生!というものを実感したことで避難行動に移ったという場合が多いのだろうと考えられますが、自分自身に降り掛かった時には『ここからの自分の行動の選択肢は激減している』と考えるべきであり、人間の力では到底どうしようもない状態が目の前で起こっているということです。 ところが多くの人は『即避難行動に移る』とはなりません。自分が思い描く危険の大きさの判断基準値の見積もり誤りというのが発生しやすくなります。それは人間が一般的に危険を感じても、実際の危険数値より少なく見積もる過小評価をしてしまう心の作用によるものです。もうひとつは、避難した方が良いだろうと考えても、普段から何も用意していない場合は『用意をする』という『避難行動にコストがかかる』という準備不足の人に多い原因もそのひとつです。だから、多くの人は、避難勧告・避難指示や警報・特別警報が出ても「即避難」には繋がらないのです。 災害を目の当たりにしても多くの人が避難しないのは、災害に対する知識が薄いために、目の前の災害に対して正確な認識が持てず、自分の身に危険が降り掛かる実感をイメージできないのです。ならば、災害の脅威をイメージすることができれば、被害を回避する避難行動がよりスムーズに行えると考えられます。 もうひとつ大切なことは「なぜ避難しなければならないのか?」を自分の心に決めておくことがとても重要な避難計画で、各個人によって違うものなのです。 |