■ 第4回 「広がる人の輪」2009.10.5

その時、玄関に平山さんが飛び込んできた。平山:「大石さん!火事や!7階で火事や!」あわてて7階に降りると、あたり一面真っ白になっている。近寄ると家の中から小橋さんが出てきた。
小橋:「遅いなぁ、平山さん、大石さん」大石:「小橋さん、この家の人は?」小橋:「家の中に居られますよ。どうやらさっきの地震の時にガスレンジを使っておられたん
だけど、地震の揺れで自動でガスが消える前に、レンジの前に置いていたものが倒れてきたらしく、それに火が燃え移ったようですね。火事や!って声が聞こえたんで飛んできたんですよ。」
平山:「消火器はどこから持ってきたんですか。」
小橋:「廊下に置いてある消火器をつかんで走ってきたんですよ。でも、火が大きくなるのって本当に早いですよね。消火器1本で消えたから良かったけど。」
大石:「水をかけて消した方が早かったんじゃないんですか?」
小橋:「大石さん、もしも、天ぷらをしていたとして、水をかけたらどうなります。あたり一面火の海になるんですよ。」
大石:「そうかぁ、二次災害が起こりますよね。」
小橋:「また、安易に水をバシャバシャかけると、マンション特有の二次災害『直下階への水漏れ』が発生してし下の家が被害を受けてしまうんですよ。」
大石:「それから、小橋さん、揺れると自動で消えるってどういう事ですか?」
小橋:「都市ガスは震度5強以上の地震を感知したときなどに、ガスを遮断する装置(マイコンメータ)が作動するんです。今ガスが止まっているのでメータを見てください。ほら装置が作動したときはメータの赤いランプが点滅しているでしょう。」
大石:「なるほどねぇ」
平山:「ただし、今はガスの供給が止まっているからいいけれど、必ず元栓も止めるようになんとか連絡しなければね。」「あっ、それから今、停電しているからいいけれど、電気のブレーカも落とすように言わなければね。」
大石:「えっ、電気のブレーカも落とすんですかぁ」
平山:「阪神淡路大震災の時には、停電後すぐに通電されたため電熱系のものから出火したんですよ。たとえば熱帯魚のヒータなんかもそうでしたね。」
大石:「それは大変ですね。もっと人を集めなければ、私たちだけでは連絡しようにも全部の家には、到底まわりきれないですよね。」
ふと声がするので、手摺り越しに下を見下ろすと管理事務所の前で志村さんと管理人の山川さんがこちらを見て叫んでいた。
志村:「火事大丈夫ですかぁ。」
小橋:「OK!大丈夫です。消えましたよぉ」
志村:「良ければ、下までおりてきてください!」
小橋、平山、大石の3人は、下まで降りていきました。
その時、管理事務所で流されていたラジオから、つぎのような情報がアナウンスされる。
●元栓を開いてもガスが出ない場合は、供給そのものが止まっているか、または自宅のガスメータの安全装置が働いて止まっているかの2 通りが考えられます。
●ガスの供給そのものが止まっている場合、供給を再開するときは、必ず、ガス会社の社員が各家庭のガス設備を一軒一軒点検して安全を確認することになっています。ガス会社から連絡があるまで待ってください。それまで、ガス栓は締めておいてください。
●自宅のガスメータの安全装置(マイコンメータ)が働いて、ガスが止まっている場合があります。
●もし自宅のガスメータの赤いランプが点滅していれば、その場合はメータに備えつけてある説明書に従って自分で復帰操作をしてください。ただし、ガスの匂いがする場合は絶対に復帰解除操作はおやめください。復帰操作を何度繰り返してもガスが使用できない場合には、近くのガス会社へ知らせてください。
その時、上層階から叫び声が聞こえてきた

「誰か!助けてくれぇ!」・・・次回へつづく

第4回の学習ポイント
@ ガスの匂いがしたら、窓や戸を大きく開け、換気をします。
A 換気扇は、スイッチの火花が火災の原因になるので使用しないでください。
B ガス栓やガスメータのコックを閉めてから、最寄りのガス会社に連絡してください。
C いざというとき、すぐに電話できるようにガスメータや電話機の近くにガス会社の連絡先シールなどを貼っておきましょう。
D 災害時、電話は通じにくくなるので、ガス漏れ通報以外の問い合わせは控えてください。
E 停電から回復後の通電火災に注意してください。
F 地震などで停電中、安易にライターやローソクの使用は止めてください。