■ 第10回「要援護者」2009.10.5

そこに民生委員の山下さんがやって来た。
山下:「高齢者や障害者の方々の安否確認に回っているんですが、情報の集約などお手伝いできる人はいませんか?この状態では私たち民生委員だけでは無理です。一刻も早く安否を確認しながらの確認集計作業は限界です」
大石:「それなら、大島さん!情報の集約をお願いします」
大島:「了解しました。ただ、個人のパソコンを使用しても良いのですが、大切なデータなので、もし管理組合で所有するパソコンがあれば使用した方がより良いと思いますし、私以外が使用するのも気にせず利用できると思うのですが?」
志村理事長:「管理組合の広報委員会が使用しているノートパソコンがありますよ。それを使ってください」
大石:「どんなパソコンですか?」
大島:「何でもいいですよ。エクセルやワードが使えれば十分です。私は本部で集計していきますので、現在判っているデータをください」
山下:「助かります。とりあえず安否のとれている独居の高齢者と高齢者の家庭です。順次判り次第報告していきますので、よろしくお願いします」
山田自治会長:「ちょっと待ってください!山下さん!民生さんの持っている情報には守秘義務があるでしょう。だから、一般の人にそれらの情報を公開するのは如何なものでしょうか?」
山下:「そう言われても他の民生委員さんや民生協力委員さんはケガをされていて、どうしようもないんですよ。こういっている間にも早く行って確認してあげなければならない方もいらっしゃるんですよ」
大石:「ふうーん。守秘義務ですか?難しいものがあるのですね」
そこに平山さんが戻ってきた。
平山:「あぁ、民生委員さんの守秘義務に関してですね。それは以前気になったことがあって調べてみたんですよ。」
大石:「平山さん、もったいぶらずに早く教えてください」
平山:「内閣府(防災担当)災害応急対策担当と総務省消防庁国民保護・防災部防災課と厚生労働省社会・援護局総務課災害救助・救援対策室が協同して『災害時要援護者の避難支援ガイドライン』を出しており、それにはこのように記載されているんです。「本人以外の者に提供することが明らかに本人の利益になるときに、保有個人情報の目的外利用・提供ができる場合があることを参考にしつつ、積極的に取り組むこと。その際、避難支援に直接携わる民生委員、自主防災組織等の第三者への要援護者情報の提供については、情報提供の際、条例や契約、誓約書の提出等を活用して、要援護者情報を受ける側の守秘義務を確保することが重要である」簡単に言えば、今の状態で情報を自主防災組織と共有すること、そして安否を確認することは『明らかに本人の利益になるとき』なんですよ」
大島:「お話をしている間に、もう打ち込み可能なフォーマットができましたよ」
大石:「仕事が早いね大島さん!じゃ、山下さん!大変でしょうが私たちも一緒に頑張りますから、力を合わせていきましょう!そして、預かった情報は厳重に管理していきましょうね」
津田:「そうです。高齢者の方々のところにも、今、焼いているイカ焼きを届けましょうよ」
そこに星崎さんが急いで帰ってきた。
星崎:「どうやら雑排水管の破断した箇所がありそうだ!」

<参考条文>
●災害時要援護者の避難支援ガイドライン(抜粋)
『関係機関共有方式の積極的活用』より、市町村では、関係機関共有方式を活用し、保有個人情報の目的外利用・第三者提供のために個人情報保護審議会の審議等を経ることについて消極的なところも多くみられるが、国の行政機関に適用される「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」では、本人以外の者に提供することが明らかに本人の利益になるときに、保有個人情報の目的外利用・提供ができる場合があることを参考にしつつ、積極的に取り組むこと。その際、避難支援に直接携わる民生委員、自主防災組織等の第三者への要援護者情報の提供については、情報提供の際、条例や契約、誓約書の提出等を活用して、要援護
者情報を受ける側の守秘義務を確保することが重要である。このことにより、個人情報の取扱制度への信頼も高まり、要援護者情報の共有も進んでいくことに留意すること。なお、同意を得ることが困難な要援護者については、例えば、災害時における保有情報の目的外利用・第三者提供を一切拒否していることや、特定の者・団体に対する情報提供を拒否していることについての登録制度を設けておくことも検討すること。
●行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律
(利用及び提供の制限)第8条 行政機関の長は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。・・・四 前三号に掲げる場合のほか、専ら統計の作成又は学術研究の目的のために保有個人情報を提供するとき、本人以外の者に提供することが明らかに本人の利益になるとき、その他保有個人情報を提供することについて特別の理由のあるとき。