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2023年8月号
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  今回は新海誠監督の防災三部作品のひとつ『天気の子』から防災の学びを探します。
『君の名は。』の歴史的大ヒットから3年、新海誠監督が、満を持して送り出した長編アニメーション作品。
天候の調和が狂っていく時代に、離島から東京に家出してきた男子高校生の帆高。
生活はすぐ困窮し、孤独な日々の果てに見つけた仕事はオカルト雑誌のライター業だった。
連日雨が降り続ける中、祈るだけで晴れにすることができる不思議な力を持つ100%の晴れ女の陽菜と出会う。
ある事情を抱えて弟とふたりだけで暮らす陽菜に惹かれていく帆高。
2人は運命に翻弄されながらも、自らの生き方を選択していく物語だが、陽菜ひとりに世界の形を変えるほどの荷を背負わせてしまうことや多くの人が助かる為にひとりの人間が犠牲になっても良いという「自分事ととらえない現代社会」を偲ばせたダークな一面も表現します。
 『天気の子』を通じて新海監督が伝えたかったことは『自分で自分の生き方を決めることの大切さ』ではないかと推測します。
また、作品を鑑賞することで、見た人の心の想いをお互いに話すことで楽しい防災会議にもなり、新しいコミュニケーションの輪が広がることにも繋がると考えます。
作品の中でも『天気は人の心と繋がっている』という表現があり、新海監督は次のように語っています。
天気を気にせずに暮らしている人はいません。
誰もが天気予報を見て「今日は洗濯できるだろうか」「どんな服を着て出かければいいか」などと考えるし、運動会や家族の行事も天気次第。
人は天気に翻弄されて生きているのだということも発想の原点にあった。
この原点はあくまで『入り口だ』。
実際は環境問題の深刻化について、地球温暖化の影響やゲリラ豪雨による災害など、シリアスな問題との関連性を考えていた。
人間が自然を破壊してきた代償であり、個々の人でできることはないが、一人ひとりの生活が確かに影響を与えている。
他人事のようであって、決して他人事ではない、エンターテインメントの枠組みでこの問題をどう捉えるか、制作を続ける中で常にあった。
この作品においては『天気の子』は帆高や陽菜が運命に翻弄されながらも、それぞれの生き方を自分で選択していく物語ですが、彼らの選択に釈然としないといった感想を抱く人もいることでしょう。
でもそれでいいのです。
『議論のテーマを投げかけること』が自分の役割なのではないかと思い至ったのです。
正解のない物語を作るという軸を据えることができた。
これこそが、前作『君の名は。』という作品から僕がもらった最大のギフトだと確信しています。
そして今、我々の社会はあの頃には想像もしなかった困難の中にあります。
『降り止まない雨の中になんとか光を見出そうとする』この物語が2021年の視聴者の方々にも少しでも楽しんで頂けるのならば、それに勝る喜びはありません」(抜粋)と監督は語られました。
 作品を率直にいうと、トテモ難しい作品です。
でも作品に引きこまれます。
前作『君の名は。』に共通し何度も何度も見返してしまう不思議さを持ちます。
題名に戻って考えてみると『天気の子』これだけでは判りにくいのですが、副題に目を落としてみると、何をどう伝えたいのかが飛び込んできます。
副題『Weathering With You』です。
「weather」は、「天気」だけではなく「嵐や困難を切り抜ける」という意味もあり、『Weathering With You』には「厳しい天候や困難をあなたと共に一緒に乗り越えよう!」という強い想いが込められていると判ります。
それを知るとこの作品の見え方は大きく変わり、天気のことを語っているだけではないことが見えてきます。
 そこで、この作品でトテモ興味深い言葉や強い想いが登場します。
実際にご覧頂きたいので多くは語りませんが、それらの強い言葉をいくつかご紹介します。
 『異常気象』という言葉。
作品の中で神主様が「観測史上初とか、世間はすぐそんなことを言う。みっともない限りだ。観測だと? 史上初だと?そりゃいったいいつからの観測だ? せいぜい百年」と語ります。
日本で公式の気象観測が開始されたのは1872年からなので150年前。
また異常気象の定義は「気温・降水量などが過去30年以上にわたって観測されなかったほどの値を示す場合」に使う言葉だそうです。
 『天気』という言葉。
「天の気分は人の都合などには構わず、正常も異常も計れるものではない。そして我ら人間は、湿ってうごめく天と地の間で振り落とされぬようしがみつき、ただ仮住まいをさせていただいているだけの身」とも語ります。
確かに、それぞれの人の都合で変わるものではありません。
「晴れ」が都合良いのか?「雨」は恵みの雨ではないのか?
人ひとりは永くても百年しか地球と共存しません。
でも百年。
一日一日一瞬の積み重ねで百年が成り立ちます。
身勝手な振る舞いをすれば、次の世代が困るだけ。
でも次の次代を良くしたいと考え歩んだなら、少しだけでも良い方に動きます。
良くも悪くも自分の動いた行動が風を起こし、嵐にもなれば、恵の風にもなるのです。

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