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2021年10月号 |
前回「決める!」と締めくくりました。簡単にできそうなことですが何をどのように『決める』のかを、今回は皆さんと一緒に考えていきましょう。 「決める」ことができないのは、現代人に限っていえる特徴なのかも知れません。現代では、行政や企業の努力によって便利で安全安心な生活が多くの人に提供されています。ここからは、過去にタイムスリップしながら考えてみましょう。 昭和生まれの人には経験がある「停電」。停電に備えて懐中電灯・電池・ローソクの備蓄は、どの家でも見られた光景でした。特に台風前や梅雨シーズン前には点検をするのも当たり前の生活習慣でした。ところが現代では停電の頻度も少なく、停電復旧時間も短縮されています。子どもの頃、停電すると何故かワクワクドキドキ楽しかった記憶があります。逆に復旧が早いと残念に感じた呑気な時代でした。今のように電力を絶対的に必要とする家電や電子機器も少なく、当時の大人もさほど慌てていないおおらかな時代でした。 大雨になれば、雨漏りのためタライやバケツが当たり前に置かれ、雨漏りがはじまると雫の落ちる金属音から、貯まった水を揺らす音に変わるという雨量の変化を感じたりしたものです。 台風の前には、窓に板を貼ったり、ガムテープでガラスの補強。家の周囲に風で飛散しご近所に迷惑をかけないか飛びそうなものをチェックしたり、ご近所のお手伝いも当たり前という温かいコミュニティ環境が普通という時代。台風の進路を大人達が話をしていた記憶も皆さんの中にはあるのでは。また、火事が近所で発生すれば、大人が飛んでいきバケツリレーで初期消火。火事が大きくなると皆で協力し合い、延焼をくい止めることを当たり前にやっていた時代。 でも時代は変わると問題に変化が生じます。水道や下水が整備され便利になりましたが、大きな災害が発生すると「断水」という新たな問題が発生。電子化が進む時代になり「停電」を笑っていられない社会情勢。高度成長期の電力需要にあわせて、原発の推進・化石燃料への非依存。ところが東日本大震災後には脱原発・自然エネルギー利用への転換。良い悪いは別にして、時代と共に生活を支えるものにも変化があり、人によっても考え方が違うのも当たり前。 火力は、昔なら「薪で火」、プロパンガスボンベの普及で「ガスで火」、現代では「都市ガスで火」と変遷しています。ガスの供給がなくなれば「電力利用で火力」となりますが、都市ガス断+停電となれば、いかに火力を手に入れるか問題です。 台風や断水に備えて「風呂に水を貯める」なんてことも当たり前の防災行動が、水は買って備蓄しておくものと変化しているだけではなく、『水の取り扱い』に賛否も巻き起こっています。戸建てと集合住宅・共同住宅などの生活様式の違いで「風呂に水を貯めないで!」という防災専門家も現れています。阪神・淡路大震災での断水・漏水で、火事の消火用水不足、目の前の火災を消したくても「水が無い!」。飲み水も無い。風呂にも入れない。手も洗えない。そんなために『水を貯めておこう!』となりました。ところが、生活様式は一律ではないとの考え方、被災した経験値からの考え方、防災活動の経験値からの思考の変遷等々、「風呂の水」ひとつでも様々な考え方の違いで、必要だと考える人もあれば、不要だと思う人もあるのです。 では、お風呂に水を貯めることがなぜ問題なのか過去の資料に基づき考えてみます。 【必要論】①トイレの排水利用 ②生活用水の確保 ③飲料水の確保 ④消火用水 ⑤洗濯利用、等々 【不要論】①小さな子どもがいるので危険 ②カビが生える ③スロッシング現象の危険性(風呂の水が地震の揺れであふれる) ④流せない(排水管の損傷の有無が確認されるまで水を流せない) ⑤飲用は不可、等々 「風呂・浴槽に水を貯める」ということだけでも賛否両論。絶対的に正しいかの答えは持ち合わせていません。私の生活の中では『台風前には風呂に水は貯めておくのと、ヤカンや鍋にも飲料水として貯める』。断水すればトイレに流すための非常用水ローリング備蓄です。でも、毎日お風呂に入らない人が浴槽に水をワザワザ貯める必要もないとも思います。 ここで問題なのは『防災活動の強要』です。防災を強要すれば、個々の生活に密着しないものとなり、備えをやる必要性を感じないばかりか、やりたくないと感じてしまうマイナス面が強調されます。防災を啓発する上では「私にはできないな」と思われるばかりか「防災なんてやりたくないし、防災の話も聞きたくない」となれば本末転倒の話となります。なので自分の生活習慣から「自分が必要とするものを準備する」「自分が守りたいものを守る」。この努力を自分で責任を持って考え決めておくということです。 「決める・決めておく」ことは簡単なこと。自分で決めるだけです。さて、最後に大切なこと『自分は助かりたい』『自分は生き抜く』。このことだけは決めておいても良いかも知れませんね。 |